「好意」に関する自動反応
私たちが日常生活を送る中で、「人に好かれたい」という欲求をもっていますよね。人は好意を感じている知人に対してイエスという傾向があります。好意を感じている人からの要請を受け入れる傾向が強いことについては、特にSNS上で展開されるものにおいて非常に重要な要素です。親友の依頼を簡単に引き受けたり、信頼する店員から商品を多数購入するなど、「好意」を持っているからこそ驚くほど簡単に行動をとる場合があります。
好意を抱く6つの法則
ロバート・チャルディーニによると、人が好意を抱く理由として「身体的な魅力」「自分と似ている」「褒めてくれる」「接触する」「協同する」「連合する」を挙げています。 彼は、ある人物に対する好意的な印象が、その人に対する後の反論や期待を歪める傾向があると述べています。
身体的な魅力がある人
まず「身体的な魅力を備えている人」は社会的相互作用の中で有利に働きます。これは「ハロー効果」と言われており、「身体的に魅力的な人」は「望ましい特徴を持っている」と自動的にイメージし、正しい原因がなくても、人は好意を持ってしまうのです。したがって、魅力的な人の方が、相手に与える影響力が強いといえます。これは、人事採用の場面でも認められており、仕事に必要な資格よりも応募者の「身だしなみの良さ」が決定に大きな影響を及ぼしています。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンも「第一印象はどこで決まるか」という研究結果では、表情やボディランゲージ55%、会話や声のトーン38%、会話の内容は7%です。視覚から入る情報が半数以上なのです。私自身も学生に対して、就職の集団面接指導をしていますが、自己PRなどの話の内容に入る前に、挨拶をした時点での身だしなみや、姿勢や表情などの外面的な印象で、圧倒的に差がつきます。これは、イケメンや美人ということだけでなく、自分自身のの「身だしなみ」が相手に与える影響が大きいということを意識しておきたいですね。笑顔で爽やかな清潔感を心がけるだけで印象は大きく変化します。
自分と似ている人
次に「自分と似ている人」人には自動反応として好意を持ちやすいと言います。これは、性格特性や経歴、どのような領域の類似性においても当てはまります。私たちは自分と似た人に好意を感じ、そのような人の要求に対しては、深く考えずにイエスという傾向が強いのてす。
自動車の営業マンは、客の下取り車を調べている間に、自分との類似点の手がかりを探すように訓練されています。もしトランクの中にキャンプ道具が入っていれば、「アウトドア」の会話をスタートさせますし、ゴルフバッグを見つけたら、「ゴルフ」の話を投げかけます。ナンバープレートを見て、その土地の話をすることもあるそうです。
このように相手との共通点を見出すことができれば、親近感を抱かせるチャンスといえます。
褒めてくれる人
さらに、「褒めてくれる人」に好意を持ちやすいのです。褒められると脳からドーパミンと呼ばれる幸せのホルモンが放出されます。 これは、意欲や快楽に関係する神経伝達物質で、放出されることで多幸感が得られます。私自身も自分のセミナーの中で「ホメホメワーク」というグループワークを実施していますが、「褒める」という行為は、相手のことをよく見ていないとできないので「あなたに好意的関心があります」という意思表示に繋がるのです。
大成功を収めたセールスマンが「自分の成功の秘密は客が自分を好きになるようにしたことだ」と述べました。彼は、毎月13000人以上のお得意さんに毎月挨拶状を送っていました。挨拶状には「素晴らしいお客様に好意を感じている」ということのみ記入されています。
たとえ、お世辞だとわかっていても、私たちは他者からの賞賛を信じ、それを与えてくれる人を好む傾向にあります。
多く会う人
私たちは、多くの場合「よく知っているもの」に対して好意を持ちます。例えば、選挙における政治家への投票などは、「読み見聞きした人」という理由が多いのです。私たちは、あまり意識していませんが、ある対象に対する態度は、過去にその対象を何回ぐらい見聞きしたかによって影響を受けることがわかります。そして、自分の写真を「通常の写真」と「左右反転した写真」を見比べて、自分でどちらの写真が好きか決めて下さい。あなた自身は「左右反転した写真」を選ぶと思います。それは、あなたが毎日のように鏡で見ている左右反転した自分の顔に反応するからです。
さらに、有名な営業マンのお話で、毎日、同じビルの会社の受付に顔を出して、アポイントをお願いしていました。ある時、営業マンは、パタッと顔を出さなくなりました。それを、ビルの上から、毎朝見ていた社長が心配になり、自ら連絡をしたとのことです。私も、毎日ジョギングしていますが、時々全く知らない方に「久しぶりですね」と声を掛けられます。私は、知らない方なのですが、相手はよく見かけているのだと思います。毎日、見かける人や会う人は、なぜか、知り合いになったように感じられて、親近感を持つようになるのでしょうね。
助け合える人
快適な環境の中で、人と協力して成功がもたらされると、その人たちに好意を持つ傾向があります。興味深いのが「ジクソー技法」と呼ばれるものです。これは、間近に迫っている試験のために、生徒たちが試験範囲を一緒に勉強するように仕向ける技法です。このメンバーには、試験に合格するために必要な情報の一部分しか与えないので、お互いに助け合う必要があります。
結果として、お互いに助け合うことにより、明らかに友情を深め、偏見が少なくなったということです。仕事においても、お客様と信頼関係を構築するためには、一緒に考えて寄り添うようなサポートが大切ですね。
好ましいものと関連づけてくれる人
人は、何か事が起きた場合は、その外的要因とその相手が結び付けられて、特定の感情を抱くことがあります。「良い情報」を与えてくれる人には好意を抱きますが、「悪い情報」を持ってくる人には悪意を持ちます。例えば、自社の商品を魅力的なタレントが持つことで、好印象を持たせようとするCMもこの一例です。好意を持つタレントが持つ商品をCMで繰り返し眺めるにより、実際の商品を見たときにタレントをイメージし、購買意欲がわくということになります。
チャルディーニは、これをパブロフの犬の条件反射になぞえています。これは、ロシアのパブロフ(1849〜1936年)が実験で発見した生理現象で、犬にベルを鳴らしてえさを与えると、ベルを鳴らしただけで、犬がだ液を分泌するようになる条件反射です。「ランチョン・テクニック」という技法がありますが、食事中に関わりのあった人や物をより好きになる効果です。楽しく心地よい感情や態度をおいしい食べ物に密接に関連するのものなら、何にでも連合させることができるのです。接待などはまさにこの効果ですね。
このように、相手に好意を抱かせるためには、楽しい思い出や好きなことを質問により引き出して、相手に楽しい気分になってもらうことが先決ですね。
まとめ 6つの法則は最強の武器
このような6つの法則から、相手に好意を持ってもらうためには、自分が相手からどのようにみられているかを客観的に意識し、相手を配慮して、相手のことを理解しようとする姿勢を持ち、好意を抱いてもらいたい人に何度も接触しながら、コミュニケーションをとることが必要であることが理解できます。 このようなことを意識して、行動することで、最強の武器となり、円滑な人間関係を築いていくことができるのです。ぜひ実践してみてくださいね。