幸福を決定する要因
あなたが、今よりももっと幸せになるためには何が必要だと思いますか?
人間関係がうまくいくこと? もっと自由に仕事ができること? もっとお金があること?
新しい仕事を見つけること? 人生でやりたいことを見つけること? 病気が治ること?
これらは、私の周りにいる人が「こうなれば今より幸せ」話していたことです。
最近のポジティブ心理学の研究によりますと、幸福度は、「遺伝的要素50%」+「環境10%」+「自分の力で変えられる40%」で決まることがわかってきました。
まず、遺伝的要素に関しては、生物学上の母親か父親、両方の親から受け継いだものです。それは、幸福の基準になるものであり、大きな挫折経験や、大成功を収めた後でも、やはりその「基準点」に戻ると言われています。例えば、太りにくい体質の方は、特に努力をしなくても、体重を維持できますが、太りやすい方は、少し気を緩めると、また元に戻ってしまいます。私自身も、太りやすいのですが、両親共に太っているので、食事や運動など気を配るしかないと諦めています。例えば、遺伝的な「クローン」が存在したとして、「遺伝的要素50%」は同じレベルの幸福度ですが、それ以外の部分で彼らの幸福度には違いがあるということなのです。
さらに、「裕福か、貧乏か」「既婚か、未婚か」「健康か、病気がちか」「美人・イケメンか、そうでないか」などの違いは幸福度のわずか10%しか占めていません。年収1000万ドル以上の裕福なアメリカ人の幸福度は、彼らが雇っている労働者の幸福度のやや上に過ぎなかったとのことです。10ヶ国で既婚者・未婚者の幸福度を調査したところ、既婚者の25%、未婚者の21%が「自分はとても幸福だ」と言っているそうです。「環境要因」が実は幸福度にあまり影響しないというのは驚きますね。
そして、遺伝に決定される性格や、さまざまな環境を考慮しても、最も重要なことは「幸福度における40%の違い」がまだ残るということなのです。幸福になるための最大の鍵は、遺伝子の性質にとらわれることではなく、環境を変えることでもなく、「私たちの日々の意図的な行動」にあるのです。これは、私たちの幸福度を高めるためには、40%は私たちがコントロールできるということです。日常生活での行動や考え方を通じて幸福度を高める余地やチャンスがたくさんあるということです。
幸福度を高める12の行動習慣
あなたが幸福になるためには、「自分自身はもちろん、周囲の人々、世の中のあらゆることについてどのように考えるか」が大切になってきます。この「幸福度を高める12の行動習慣」を身に付けて、自分で変えることのできる40%として役立ててください。この数字は、自分自身を幸せにすることができる可能性を十分示しています。
1.感謝の気持ちを表す
「感謝」とは、物事を大切に味わい、それを当たり前だとは思わず、現在に価値をおくものです。
感謝をよく示す人ほど、落ち込んだり、不安になったり、孤独を感じにくいことがわかっています。
感謝をすることで、「今」という瞬間から最大の満足感と楽しみを惹きだせるようになります。さらに自尊心や自身が強まります。感謝の気持ちをもつと、どのような挫折を経験したときにも、反射的に「悲しい」と思うのではなく、「今の生活で何が大切か?」「どうすれば、今よりよい状況にすることができるのか」とポジティブに捉えるようになります。
2.楽観的になる
楽観主義とは、単に「私はそれを手にすることができる」という考え方だけではなく、「どのようにして達成できるか」というプロセスについてもしっかり考えることを意味しています。
例えば、「これから5年後に起業している」と決めたとします。その時に、「資金はどのように手に入れよう」とか「うまく経営できるのか」という不安要素が浮かんできた時に、可能な解決策を考えるということです。自分自身が持っている強みや資源を認識し、意欲を掻き立て自分を励ましてみてください。楽観的な考え方が身に付くと、ポジティブな解釈や希望の兆しを見つけることが、習慣になります。
3.考えすぎない・他人と比較しない
何事も、深く考えて行動しようと慎重になるものですが、何度も反すうして考えている間に、自分自身についてはもちろん、問題を見抜く力を手に入れたと思い込みがちです。実際にそのような力を持てることは、ほとんどないそうです。考え過ぎてしまう人が幸福を手に入れるためには、ネガティブな考え方を、当たり障りのない考え方に変化させることです。心の底から幸せな人は、暗い考えや不安な考えから自分のエネルギーや注意をそらすことができる能力がある人です。
そして、私たちは気づかないうちに、友人や同僚と比較してしまいます。人をうらやましく思っていたら、幸せにはなれません。「社会的比較」に注意を向け過ぎる人はいつも傷つきやすく、何かに怯え、不安を感じてしまいます。最も幸福な人々は他人の成功から喜びを得ることができ、他人の失敗を目の当たりにしたときは心遣いをすることが大切なのです。人は幸福であればあるほど、周りの人との比較に関心を払わなくなるということなのです。
4.親切にする
私たちが身体だけでなく、心も健康で幸せであるためには「社会とのつながり」が重要です。親切にすることで得られる大きなメリットは、自己認識にかなりの影響を及ぼします。
人を助けることが「誰かとつながりたい」「感謝されたい」という基本的な人間の欲求が満たされるのです。ボランティア活動などの自分を惜しみなく与える行為は、幸福感が高まることが示されています。
5.人間関係を育てる
なぜ、心身の満足には「人間関係のつながり」が重要なのでしょうか?
ダーウィンの進化論から得られる教訓は「人間は、強力かつ安定したポジティブな対人関係を求め、維したいという強い欲求に動かれるものだ」と主張しています。人間関係に投資をすると、恋人や配偶者でなくても、人生で重要なほとんどの人間関係において幸福がもたらされるのです。
そして、友人や家族の幸運や成功を賞賛しましょう。良い知らせを伝えた時に褒めてくれることは、よい知らせを伝えた時に賞賛して認めてあげましょう。それは、相手のために喜んでいるだけでなく、あなたの夢を尊重し、あなたとの関係を大切にしていることを意味しています。ある人にとって良い方向に進むことに対して、どのような反応をするかが、その人との繋がりを判断する要素になるのです。 このような反応を繰り返した人は、わずか1週間で以前より、幸福度を感じて、落ち込むことが少なくなったという研究結果があります。
6.ストレスや悩みへの対抗策を練る
今後、あなたの人生にどのような困難やストレス、苦労があろうとも、「どのように考え、どのように行動するか」が、最終的には「どれぐらい幸せになれるか」に大きく関わってきます。「コーピング」とは、ネガティブな出来事や状況により生じた苦痛やストレス、苦しみに対処するためにとる行動のことです。誰しも忘れられないトラウマ(心の傷)が一つぐらいあるかも知れません。
トラウマに有効な3つのコーピング法を試してみてください。
「書く」というプロセスを大切にする
心理学では「トラウマとなる過去の出来事に関して心の奥底にある感情を書けば、多くの恩恵がもたらされる」という結果が出ています。なぜなら「書く」というプロセスにおける重要なメカニズムの助けによって、人はトラウマを理解し、受け入れられるようになり、意味を理解できるようになるからです。意味を見出せると、それについてあまり考えなくなる効果もあります。
「トラウマ」を経験したことにより成長したことを考える
「トラウマ」になっている辛い経験を乗り越えた後、どのように自分が変化したかを考えてみましょう。私の場合は、学生時代にクラブ活動を途中で辞めたことが大人になってからも、ずっと心の傷になっていました。それは、親の期待に応えられなかったという思いがあったからです。
そして「一つのことを継続することは素晴らしいことで、辞めるのは悪いこと」という認識が強く、そのように教育されていました。日本人は「長く続けることで成果が出る」という考え方を持っているような気がします。しかし、私は辞めたことで気持ちがスカッとして、「また続かなかったらどうしよう?」ではなく「とりあえず、やってみて嫌なら辞めてもいいよね」という意識が働き、失敗を恐れなくなりました。結果として、さまざまなことに挑戦することが怖くなくなり、行動力が身に付きました。辛い経験を克服して、生き抜いていることは、成長の証です。
7.人を許す
人生においての自分の心の傷の中には、誰かに虐待されたり、傷つけられたり、攻撃されるなどの苦痛を味わったという経験もあるかも知れません。そのような被害を受けた人間の反応として、「相手に同様の被害を与えてやりたい」と思うのは自然なことです。この場合の典型的な2つの反応とは、「加害者を避けること」と「復讐を願いうこと」であり、そうした反応がネガティブな結果を引き起こすことは明らかです。
では「相手を許す」には何が必要でしょうか?許しとは、あなたが自分のために行うものであって、あなたを傷つけた人のために行うものではないのです。恨みや憎しみにしがみつくことは、あなたが憎んでいる相手よりも、あなたを傷つけることになります。そして、人を許せないという思いは、いつまでもくよくよと考えたり、復讐にこだわることとも密接にかかわっています。しかし、許しを与えれば、人は前に進んでいけるのです。
許していることを想像するトレーニングを試してみましょう。最初にあなたを虐待したり怒らせた特定の人物を設定します。次に想像力を働かせて、その人の感情や状況を理解し、許しを与えている状況を思い浮かべます。許しを与えるには、あなたが苦しみや怒り、憎悪の感情を開放し、もっと寛大で慈愛に満ちた考え方をすることが必要です。
8.熱中できる活動を増やす
私たちは意外にも「今を生きる」ということに集中する習慣を疎かにしている場合が多いです。デスクに座りながら、ゴルフのことを考えたり、夫婦で会話をしながら、明日の仕事を心配するなどです。 しかし、何かに没頭するあまり、時間が経つのをすっかり忘れてしまった経験はありませんか?
このような現在のことに心から没頭している状態を「フロー」といいます。素晴らしい人生、幸福な人生というものは、フローによって、つまり「自分がやっていることに完全に没頭する」ことによって作られるといいます。フローの状態を維持できるように、私たちは、より挑戦しがいのある活動をたえず試すことです。精神を集中する鍛錬や体を動かすことに取り組む必要があります。
9.人生の喜びを深く味わう
親は子供に「しっかり勉強しなさい」と言います。そうすれば、「良い成績をとって、一流の大学に行き、良い仕事につけるから」と言います。上司は部下に「一生懸命働きなさい」と言います。「そうすれば、昇進して給料が上がるから」と言います。これらの言葉が表すように、人は今を生きることはめったになく、現在の喜びを味わう時間がないのです。
最も大切なことは未来に起きると信じているからです。私たちは、明日が今日より良いと信じて自分を納得させて、幸せになるのを先延ばしにしているのです。喜びを味わうには、過去の要素、現在の要素、そして未来の要素があると考えられます。研究者たちは「味わうこと」を「喜びを生み出し、強化し、長続きさせる」ことができる思考や行動として定義しています。例えば、道端に咲いているバラに気付かず通り過ぎるのではなく、立ち止まってバラの香りを嗅ぐ」という行動を取れば、喜びを味わっていることになります。
このような、ありふれた経験を楽しことが大切です。忙しい生活の中でも、食事、仕事を終えた時、散歩、お風呂に入る行為などをゆっくり味わって楽しんでみましょう。これらの日常的な行動を「急いで済ませた人」と「ゆっくり味わった人」では、喜びをじっくり味わった人の方が幸福度が目覚ましいほど高まったという研究結果があります。そして、家族や友達と楽しい思い出にふけることも有効です。高齢者は思い出にふけることに時間を費やすほど、よりポジティブな影響を受け、より道徳的になることが報告されています。過去の幸せだった出来事やイメージを思い出すことにより、現在の生活を楽しめるようになると言われています。
10.目標達成に全力を尽くす
周りの幸せそうに見える人は、「自分にとって意味のあること」に懸命になっている人です。ギターを木から作っている人を見ると、「なんで?買えばいいのに」と思うかも知れませんが、その人にとっては「作ること」が喜びです。幸福な人は、何らかの目標や計画をもっています。目標達成に全力を尽くすと、何よりもまず人生の目的が見つかり、自分の人生を自らがコントロールしている感覚が得られます。そして、環境の変化より、新しい活動を大事にします。例えば、引っ越して良い家を買うや、大きなテレビを買うなどは、一時的には幸福になりますが、すぐに環境になれてしまい、さらに大きな家やテレビというように、より大きな喜びを求め始めるのです。その一方で、「ヨガ教室に通い始める」「地域のボランティアに参加する」などの新しい活動はポジティブな出来事をいくつももたらし、いつも幸せな気分にする力があることがわかります。そして、その活動に価値を見出せるため、より幸福感が高まります。
11.内面的なものを大切にする
内面的なことを大切ににするとはどのようなことでしょうか?スピリチュアルなものや宗教についての研究を躊躇する心理学の研究者は多いでしょう。しかし、私たちは心の拠り所を求めます。子供の頃に、旅行の朝、台風が近づいてフェリーが欠航になるかも知れないという状況を知り、弟と二人で神に祈りました。今でも、勝負のときには「亡き父が守ってくれる」という意識を持ちます。誰しも、何か心の拠り所として、「内面的なもの」を信じているような気がします。実際、トラウマとなる出来事を経験したあと、信仰心のある人のほうが信仰心をもたない人よりも回復状態がよく、健康で幸福を感じることが、進歩しつつある心理学によって裏付けられています。
これは、「内面的なもの」を信じている人は、困難な時に慰めを得られる源泉となるだけでなく、自信をもたらし、無条件に愛され、大切にされているという感覚を与えてくれます。困ったときには、信じているものが助けて下さると思うと、平和で穏やかな気持ちになります。常に、自分自身が信じる「内面的なもの」は、人生を豊かにしてくれますね。
12.身体を大切にする~瞑想と運動~
変化が激しく、ストレスフルな時代では、常に脳をフル回転させている状態ですよね。そのような中で、「瞑想」が注目されています。瞑想は、ストレスにも、認識能力にも、身体の健康にもポジティブな影響を与え、自己実現や道徳的な成熟にも効果をもたらしています。
そして、身体を動かしましょう。運動はあらゆる活動のなかでも、とても効果的に幸福度を高めてくれます。運動をすることで、自分の身体や健康をコントロールしている気持ちになります。ポジティブな気持ちが増えて、不安や悩みが追い出されるからです。瞑想と運動の効果は似ています。この2つの活動が、不安感を減らして気分を向上させるホルモンを増加させるので、理想的な効果を与え場合が多いことはすでに証明されています。
簡単な瞑想の方法
1.好きな音楽や、アロマキャンドルなどを用意しておきましょう。
2.くつろげる場所に1人で背筋を伸ばして座ります。
3.目を閉じ、呼吸を意識し、キャンドルの香りや音楽などに意識を集中させましょう。
4.「仕事のこと」など考えが頭をよぎったら、一度考え終えてから、呼吸に集中しましょう。自分の考えが、よそにそれていることに気付いたら、心の中に目を向け、とらわれている状態から自分を「切り話す」ことです。
5.5~20分間、実践してみましょう。
自分で変えられる40%に期待しよう
自分で変えられる未来が40%であれば、後天的な考え方や思考パターンで変化させることに着目するのはいかがでしょうか?
人生は自分で変えていけるものと考えるポジティブ思考をとることで大きく変わってきます。ある大学の研究では、落ち込み度がひどく寝込んでいるグループに幸福度を高める方法としてウェブサイトにアクセスして今日の出来事の中でよいことを3つ思い出して記入する方法を進めました。
その人たちはベッドを離れることすら困難であったので「ようやく今日は太陽が顔を出した」とか「本を1章だけ読んだ」などです。このことを15日実践すると「ひどく落ち込んでいる」状態から「どちらかというと落ち込んでいる」に変化し、94%の人が安堵感を覚えました。自分のことでなくても、よいことというのは、元気を与えてくれるのです。
自分自身が幸せになるためには、「幸せになる方法」を実践するということが何より大切なのです。自分自身の明るい未来のためには、幸せを創り出していきましょう。幸せというのは、待っていれば訪れるものでは無いし、青い鳥のように探しに行くものでもないのです。ゆとり世代以降の人たちは「自分の個性を発揮しましょう」と教えられました。そのため「個性を発揮する場所探しに行きます」これは青い鳥症候群といわれています。どこにいても自分の居場所はここではなく、もっと他にあるはずと考えてしまうのです。幸せは創造するものです。 未来に向けて、私たちの努力で主観的な幸福感を変化させられるものもあるはずです。
我々自身の中に幸せを創り出す力があります。自分自身の思考の持ち方を前向きにさせ、それを習慣として継続させることこそ幸せな未来への第一歩です。
参考:幸せがずっと続く12の行動習慣/ソニア・リュボミアスキー 日本実業出版社